大手自動車部品メーカーの生産技術職員
今回は私自身の経験をもとに自動車部品メーカーの技術職がどのようなものか、記述したいと思います。
私は生産技術、製造技術、品質管理に類する部署を経験しているので、実体験をシェア出来ればと考えています。
今回は生産技術に関して特に記述します。
今後、就職、転職を考えている方へ向けた内容です。
ぜひご一読下さい。
生産技術とは
あまりなじみのない言葉かもしれないので簡単に生産技術に関して説明します。
一般的に製品製造に必要な製造ラインの設計~管理を実施する部署のことを指します。
お客様と自社が製品仕様等を詰めて製品の図面が出来上がったら、どのように製作し、どのように量産していくかを考えて組み上げていく必要があります。
生産技術では、量産方法や実際の製造ラインで加工し、組み上げ、保証する。仕組みづくりをして実際のライン稼働まで実施しています。
自動車部品メーカーの一例になります。他業界では多少異なるかもしれません。
実際の業務内容
早速、実体験を記述したいのですが、私は製品の組立~検査を実施する設備の製作やラインを稼働させるまでの仕組みづくりを主業務としていました。
上司に信頼してもらえて任せてもらえれば、かなり裁量権があり自由な業務と認識しています。
仕事内容は多岐に渡るので箇条書きにします。
- 仕様設計
- 製作に関わる諸手続き
- 製作スケジュールの管理
- 外注の場合は製作部署や設備メーカーとのやり取り
- 完成した設備を工場に据え付け
- 設備を安全、適切に使用するための仕組みづくり
- 稼働後のアフターフォロー
- 他工場へも設置必要であれば現地支援
ざっと洗い出しただけですがこんなところです。
どのプロセスも魅力もあり、面倒事もあり、雑務も大量に発生します。
様々な部署、取引先、チームメンバーと連携し仕事をこなす必要があります。
次から次にアイテムが発生するので、後々まで残るような問題点は発覚した時点で潰しこんでいかなければ、負のスパイラルに巻き込まれます。
身についたスキル・ノウハウ
この部署で身についたことを記述します。
改めて見ると広く浅くな部分が多い印象も受けますが、何をするにも役立つスキルと思います。
スケジュール管理
一番身について、苦労したのがスケジュール管理です。
部品メーカーはどこも一緒だと思いますが、お客様と契約が済んで量産開始日が決められたあたりで生産技術のお仕事は本格化します。
一番最初に遅れることが出来ない期限が決められてしまいます。
先述の様々なプロセスを並行して進めていく必要があるため、どのタスクにどのくらいリソースを割けるか判断を迫られます。
スケジュールを組んで、進捗を管理し、遅れているプロセスの挽回も都度盛り込んでいく。
ビジネスでは当たり前のことですが、非常に重要なスキルとだと思います。
実態を少し記述します。
連携先が多いので各プロセスでスケジュールが狂うことも多々あります。
設備製作の遅れ、社内外の調整の遅れ、設備部品の遅れ、社内外のリソースの変動、天災や政治的な影響を受けることもあります。それでも期限が決められているので何とかしなければなりません。
(天災や政治的な話になるとさすがに納期調整が入ることがほとんどです。)
特に最近はメーカー同士の競争が激しいため、従来のスケジュールで動いていては他のメーカーに負けてしまうので、無茶なスケジュールを組まないといけないことが多いです。
そして、新規性の高い設備の場合、どうしても不具合が多く修正に時間がかかってしまいます。
外部要因も影響してきます。今回のコロナ禍も各国のメーカーが操業停止で部品納期が3か月ずれるということもありました。
中国の製造業の影響で重要部品の納期が1年後と平気で回答される時期もありました。
そんな状況でもお客様との取り交わしがあるので、期限の延長はなかなかできません。
限られたリソースで良質なアウトプットを目指すならば、スケジュール管理は必須のスキルだと思います。
先端技術に関する知見(製造業)
設備製作のため、センサーや制御部品、バルブ、モーター、測定機器メーカーなど様々なメーカーとやり取りをするので、最先端の知見を得ることが出来る可能性があります。
やり手の営業の方を捕まえておけば、向こうから最先端の製品情報を教えてくれます。
最近はあまりありませんが、最新技術の見本市やセミナーの情報を持ってきてくれて、会社や取引先のお金で最新技術を勉強することができます。
一般人は入れなかったり、入れたとしても数万円の費用が掛かることもざらです。
最近だとAIが製造業にも積極的に取り入れられていますが、どのような部分に取り入れられているか具体的な情報はなかなか出てこないと思います。
それを向こうからまとめて持ってきてくれるわけですから、大きなメリットだと思います。
こういった知見の積み重ねで救われることが良くあります。
営業の方もお仕事ですから、こいつに売り込めば利益につながると思って貰えれば、効率良く必要な情報だけを貰えます。
そのためには結局、結果を出していかなければいかないわけですが。
問題解決能力
設備を製作し実際に運用するので問題解決の手法を日々活用することになります。
よく言われるPDCAを回すというやつです。
Plan check do action です。
実際に利用しようとすると解決が困難な課題が多数出てきます。
全て解決することはできていませんが、実践をこなす事で自分の分野外の仕事をこなす際にも役立ちます。
PDCAのようにプロセスを決めてこなすことをフレームワークと言いますが、いくつかあります。どのような問題にどのフレームワークが適しているか実践でも取り入れていけば、様々な業種で活躍することができます。
実状を書くと重要な案件以外はキチンとフレームワークをこなすことは難しいかもしれません。
他の業種でも同じだと思いますが、慢性的なリソース不足で、すべての案件に十分な時間をかけて分析、対応は出来ません。
上位方針でフォローされるような重要案件をこなす時だけ使ってます。
ただ慣れてくると自然と頭の中でフレームワークに沿って考え出しているので、スキルとして身についているとは実感しています。
大変なところ
出張が多い
コロナ禍を経験してリモートワークも普及して、リモートで対応できる場面も増えてきましたが、出張が多いです。
- 設備製作時
- 設備稼働時
上記の時期はどうしても現物を触りながらでないと、対応できない事象が多々発生します。
設備製作時は不具合が多いと2~3週間出張して設備メーカーに入り浸ることも珍しくないです。
そして、完成した設備の機能点検なども高度な設備になればなるほど手間がかかります。
自分が仕様を考え製作した設備なわけですから、少なくとも社内では一番その設備に関して詳しいわけです。
誰かに変わりに行ってもらうのも一苦労、あとで致命的な欠陥がでたら大目玉。
必要な出張はどうしても発生します。
そして設備稼働時、これがまた厄介です。
生産工場に設置して稼働し出すまではいいのですが、稼働後不具合が見つかった場合、現地スタッフと連携して対応しなければなりません。
しかし現地スタッフもこのご時勢ではギリギリの人員しか配置していません。
それぐらい現地で対応してよ。と思うことでも手が取れないことが多々あり、結局出張して自分で対応することがあります。
ちなみに今私はその現地スタッフ側(製造技術)です。
どちらもリソースが限られており、大変なのですが、生産技術側の方が融通は利くかなと思っています。
出張が不要な時期は全然ないけど、必要な時期は月の半分以上出張とかも多い職場です。
海外現地法人の立上げ支援時は3か月出張とかもざらです。
独身の時はむしろ出張であちこち行けることが嬉しかったのですが、家族ができたらもう少し出張が少なくてもいいかな。とは感じていました。
まとめ
人によっても異なると思いますが、担当業務の幅が広く、浅く広く業務をこなす部署だと感じています。
漫然と仕事をこなすだけだと、専門性の高いスキルは身につきづらいかもしれません。
仕事の流れを理解して、ビジネスマンとしての必須のスキルを磨く機会は多い部署だと思います。
業務範囲が広いので積極的に情報を取りに行く人なら色々な知見を広めることが出来る業種でもあります。
生産拠点と離れていると出張が多い業種でもあります。
以上、ここまで読んで下さりありがとうございました。
この記事が皆様のお役に立てれば幸いです。